仕事の指示等が「聞こえるが聞き取れない」障害があるのを知る
今は夏休みで、これまでの仕事人生を振り返ることが多くなった。
そこで思ったのは、自分は、なぜか人よりも、言葉を聞き返すことが多かったり、仕事で一発で指示を聞き取れなかったりする、ということだ。半年以上前には「電話恐怖症を笑うな!克服しなくていい!我慢も必要ない!」という記事も書いたが、当然電話でも相手の喋っていることを理解しづらい。
相手の声は十分に聞こえているはずだ。最近は聴力検査をしていないから聴力が十分かどうかまでは定かでないが、家族の声が前より遠くなったとは感じないし、むしろ人よりも音には敏感なほうだ。ビルの入口とかにある害獣よけのモスキート音も聞き取れる。
しかし、相手の “言葉” が聞き取れない・理解できないことが多い。
具体的には以下のとおりだ。
・滑舌が悪く聞こえる(モゴモゴ、クシャクシャという感じ)。電話の場合、さらに滑舌が悪く感じる。
・雑音が入ると、雑音を聞いてしまう。
・別の人が喋っていると、そちらに気を取られてしまう。
・仕事の電話中、紙で追加指示をくれればOKだが、口頭で「○○も尋ねてみて」と指示が入ると、電話の相手の話がよく分からなくなる。
・電話の相手が誰だったかですら、分からなくなることがある。
・人の話を聴く際は、相手の話をそのまま理解しようとするより、聞こえた音声情報をそのままメモしたほうが、後々理解しやすい。
・「前にも言ったかもしれないが」と前置きされても、「あれ?そうだっけ?」と思うことが多い。
・・・日によってマシな日があったり、そのときの精神状況によっても程度が変わったりはする。が、基本的には上記のような感じだ。
私は、ひょっとするとまだ軽いほうなのかもしれない。
なぜかというと、仕事にはそんなに大きく差し支えがないからだ。日常生活も営めているし、ある程度仕事も慣れれば、言葉が聞き取れなくても、推測することができる(それが仇となることが今後あるかもしれないが)。
でも、世の中には、もっと辛い思いをしている人がいるかもしれない。
・・・前置きが長くなったが、今回、ちょっくら調べてみた。
そしたら、下記の障害が存在することが分かった。
<話の流れ>
聴覚情報処理障害(APD)
聴覚情報処理障害 Auditory Processing Disorder(以下、APD)をご存知だろうか?
かつてはこの障害はほとんど知られておらず、最近徐々に知られるようになってきているらしい。恥ずかしながら、私も今日初めて知った。
APD ってどんな障害?
ミルディス小児科耳鼻科院長・亀戸小児科耳鼻科理事長である平野浩二ドクターは、APDは「音としては聞こえているのに、言葉として聞き取れない障害」と、『特選街web』内で述べている。
また、彼は、同サイト内で以下のようにも言っている。
私が診察した患者さんには、プロの演奏家もいます。つまり、楽器の音や音階を認識する力は一般の人以上に優れているのに、言葉として認識ができないことに悩んでいる人もいるということです。
どうやら、耳の良いはずの演奏家でさえも、APDとは完全無縁というわけではなさそうだ。
さらに平野ドクターは、APDについて次のとおり分かりやすく説明している。
聞こえる言葉を、仮に漫画の吹き出しの字にするなら、ところどころの字がぼやけたり、×××などの伏せ字になっていたりして認識できなかったり、ほかの雑音までが等しく文字になって被さってくるようなイメージでしょうか。
なるほど!これだ!まさにこんなイメージだ。
聞き取れない会話を文字で表現すると……
先ほどご紹介した『特選街web』にあった画像のリンクを貼ってみよう。
漫画の吹き出しで表現されており、とても分かりやすい。
で、私の経験に基づいて話すと、
たとえば、
「明日の17:00から会議室2で新入社員向けの簡単なヒアリング会を行いますので、メモできる物を持って5分くらい前には集まっていてください」
といった指示されているときに、まわりで、
「昨日さ~、俳優の○○君が不倫したっていうニュースやってたけど、見た??」
「ああ、あれね!!ありゃちょっとひどいよねー!」
という会話があったとする。
すると、次のように聞こえてしまうのだ。
「明日の昨日の×××の〇〇会議室2が不倫したっていう簡単なヒアリング会を見たので、メモできる物あれね!!ありゃ前にはひどいよねー!集まっていてください」
ちょっと極端かもしれないが、そんな感じ。
で、もっと正確に表現するなら、
「アスノキノウノ×××ノ○○カイギシツ2ガフリンシタッテイウカンタンナヒアリングカイヲミタノデ、メモデキルモノアレネ!!アリャマエニハヒドイヨネー!アツマッテイテクダサイ!」
となるだろうが、私はそこまではひどくないので、
「明日のキノウノ×××の〇〇会議室2が不倫シタッテイウカンタンナヒアリング会を見たので、メモできる物アレネ!!前にはひどいよねー!アツマッテいてください」
という感じだろうか。
辛うじて理解できるか、ギリギリできないか、の瀬戸際だ(でも「5分前」っていうのを聞き落としている)。
だから、「もう一度お願いします」と聞き返したり、メモをしつつ「まあ、なんとかなるか」とやり過ごしたりするわけだ。
あなたはどうだろうか??
最悪、うつ病になってしまうこともある
人によっては、聞き取れないことによるイライラや、トラブル発生によるストレスなどにより、最悪うつ病になってしまうこともあるらしい。
本人が気づいていないことも多く、それを教えてあげられる人も少ない。耳鼻咽喉科の医師ですら、「聴力に異常はありません」と片付けてしまう人が多いのが現状のようだ。
きっと、得体のしれない現象に対していらだちつつも、「なんで自分はこんなに馬鹿なんだろう」「どうして何度も同じことを言われてしまうんだろう」と悶々と過ごしている人は多いと思う。
気になる方は、うつ病になってしまわないうちに、診察を受けてみてはいかがだろうか。残念ながら治療法は確立されていないらしいが、何らかの対処は可能になるかもしれない。
とはいえ理想的なお医者さんも少ないので、ネットで探して、時間を見つけて行くことになるだろう。
また、先ほどの平野ドクターは、 APD のサイトを起ち上げておられるので、活用してみるのもひとつの手だと思う。
APD は特性の一つであり、まわりがそれを理解することも大事
平野ドクターは、
私は、APDはその人の特性の一つだと考えています。なんでもできるスーパーマンのような人はいません。できないこと、苦手な分野にこだわって気に病み過ぎるよりも、自分が得意とするところで勝負していただきたいですね。
と述べているが、これは私も同意する。
障害は「障害」で確かなのだが、その人の「特性」として捉えることで、ポジティブに見ることができる。特性とは、その人の個性でもある。その個性を生かせる場面にて仕事することが重要なのだと思う。
ただ、世の中、なかなか思いどおりはいかない。
でも、まわりが、APD の存在を理解していれば、指示の仕方も変わるだろうし、必要以上にカッカすることもなくなる。また、人事考課においても、その人に見合った職務や配置を考えることもできるようになる。
APD のみならず、ADHD 然り ASD 然り。。
キレイゴトだ!と片付けてしまう人もいると思うが、キレイゴトは実現していきたいものだ。キタナイゴトとキレイゴトがあったら、やっぱりキレイでいたいよね♪