ドクターストップを無視して出勤→3割負担で済まないことがある?!
私は今、休職中である。そして昨日の診断にて、さらに1ヶ月、その期間が延びた。
休職(自宅療養)とは、いわゆるドクターストップだ。医師本人も「これはドクターストップです」と言い切っていた。
そこで私は、さらに休職する旨を職場に伝えた。そしたら、「あなた自身は、休むつもりか出勤するか、どちらですか」といった質問を受けた。
もちろん、私は休む選択をした。だって、ドクターストップなんだから。
ただ、この世の中、休職診断書が下りても、出勤してしまう人はいるだろう。なになに、実は私も、最初の一週間ほどはドクターストップを無視して出勤してしまっていた。というのも、どうしても引き継ぎや仕事の整理が必要だったから。
しかし、ドクターストップを無視することには、あるリスクが伴う。
会社で何かあったとき、会社が安全配慮義務を怠っていることになりうるし、労災に関しても十分な理由となりえてしまうのだ。
そして労働者本人にも、こんなリスクがある。
それは、3割負担で済んだ医療費が、3割負担で済まなくなる可能性がある、というもの。
「え!?マジで!?知らなかった!!」という人は多いだろう。ドクターストップには法的な効力はないから、そう思ってしまうのも無理はない。
が、法的な効力はなくても、間接的には関係していることを忘れてはならない。
<話の流れ>
根拠となる法律「健康保険法」の条文
まず健康保険法の第119条を見てみよう。
※2021年1月12日現在
保険者は、被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。
ちょっと難しいので、噛み砕くとこうなる。
「今は3割負担にしてあげてるけど、正当な理由がないのに医師の指示に従わなかったら、3割負担で済まない可能性があるよ」
・・・これ以上のことは書いてないので解釈方法の余地はあるが、まあつまり、不利益をこうむりうるってことは覚えておいたほうが良いかもしれない。
条文にある「正当な理由」については、休みたいけど休めない事情があったとか、そういうことだろう(たぶん)。私の場合、引き継ぎをしなければ会社に影響が及ぶ…とかかもしれない(いや、議論の余地はあるけど)。
なので、最初から「ドクターストップを無視して出勤します!」とか言っちゃうと、それはやっぱり正当な理由とは思えない。だって、休もうと努めていないもんね。
会社から「休職か出勤か」と訊かれたら「休職」一択
したがって、休職診断書が出たのにもかかわらず、会社から「休職するつもり?出勤してくれるつもり?」と訊かれたら、まず、
「休職します」
と言い切るのが筋。惑わされずに毅然とした態度で答えよう。
でもそこでゴネゴネ言ってきたら、改めて検討すれば良いと思う。
ただドクターストップが出ているということは、やはり休まないと病気や怪我がきちんと治らないといった医師の判断があるので、自己判断せず、おとなしく休むべきだと思う。
それでも迷うなら、一度医師に相談したほうが良い。自己判断で「出勤します!」と言ってしまうと、治るものも治らなくなってしまうかもしれない。それに、状況によっては、本当に3割負担では済まなくなることだってありうる。
まあ、それがどうバレるかは別問題だけど、そんなこと関係なく、休職なら休職。医師の指示にはきちんと従うのが吉。
類似の法律にも根拠条文あり
今回は健康保険法を例にあげたが、人によっては、健康保険法ではないことがある。
類似の法律には、
・国民健康保険法
・国家公務員共済組合法
・地方公務員等共済組合法
・私立学校教職員共済法
などがある。
それらにも、健康保険法と同じく、類似の条文がある。自分がどの保険法に該当するか分からない人は、保険証を見れば判断がつくと思う。それでも分からなければ勤め先や市区町村に訊いてみよう。
国民健康保険法
第62条 ※2021年1月12日現在
市町村及び組合は、被保険者又は被保険者であつた者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、療養の給付等の一部を行わないことができる。
国家公務員共済組合法
第94条第3項 ※2021年1月12日現在
この法律により給付を受けるべき者が、重大な過失により、若しくは正当な理由がなくて療養に関する指示に従わなかつたことにより、病気、負傷、障害若しくは死亡若しくはこれらの直接の原因となつた事故を生じさせ、その病気若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げ、又は故意にその障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げた場合には、その者には、当該病気、負傷、障害又は死亡に係る給付の全部又は一部を行わず、また、当該障害については、第八十五条第一項の規定による改定を行わず、又はその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして同項の規定による公務障害年金の額の改定を行うことができる。
地方公務員等共済保険法
第108条第3項 ※2021年1月12日現在
この法律により給付を受けるべき者が、重大な過失により、若しくは正当な理由がなくて療養に関する指示に従わなかつたことにより、病気、負傷、障害若しくは死亡若しくはこれらの直接の原因となつた事故を生じさせ、その病気若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げ、又は故意にその障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げた場合には、その者には、当該病気、負傷、障害又は死亡に係る給付の全部又は一部を行わず、また、当該障害については、第九十九条第一項の規定による改定を行わず、又はその者の障害の程度が現に該当する障害等級以下の障害等級に該当するものとして同項の規定による公務障害年金の額の改定を行うことができる。
私立学校教職員共済法
第25条 ※2021年1月12日現在
国家公務員共済組合法の第94条(先述)を準用。
以上、難解な条文であったと思うが、まあ要するに、ドクターストップに従わないと、結果的に損をすることになりうるというわけだ。
ドクターストップばかりではない。
医師が「普段の生活ではこういったことに気をつけてください」と言っていても、気をつけずに過ごしていたら、そりゃ3割負担で済まなくなっても文句言えないよねってことにもなりうる。
そりゃそうよ。真面目に治療に専念しない人に、なぜ国民の皆から徴収した保険料の財源をあてなければならないのだ。血税…もとい、血保険料なのだから!
それをきちんと把握した上で、医療機関を利用するようにしたいものだ。